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熊本地方裁判所 昭和47年(ワ)132号 判決

原告

林田健一

被告

九州電気工事株式会社

ほか一名

主文

一  原告の被告九州電気工事株式会社に対する請求を棄却する。

二1  被告赤星清己は、原告に対し金二〇三万〇四七〇円およびこれに対する内金一八四万〇四七〇円につき昭和四四年三月三〇日から、内金一九万円につき昭和五〇年一月三一日から、各支払ずみまで年五分の割合による各金員を支払え。

2  原告の被告赤星清己に対するその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用中原告と被告九州電気工事株式会社の関係分は原告の、原告と被告赤星清己との関係分は、これを五分し、その三を原告の、その二を右被告の、各負担とする。

四  この判決は原告勝訴部分に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者双方の求める裁判

一  原告

1  被告等は、原告に対し連帯して金五九〇万一三九八円およびこれに対する内金五一五万一三九八円につき昭和四四年三月三〇日から、内金七五万円につき昭和五〇年一月三一日から各支払ずみまで年五分の割合による各金員を支払え。

2  訴訟費用は、被告等の負担とする。

3  仮執行の宣言。

二  被告等

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は、原告の負担とする。

第二当事者双方の主張

一  原告の請求原因

1  本件事故

(一) 発生日時 昭和四四年三月二九日午後一〇時四〇分頃。

(二) 発生場所 熊本市平田町堀内二〇番地国道三号線熊本スズキ自動車株式会社前路上。

(三) 加害(被告)車 被告赤星運転の自動二輪車(原付二種)。

(四) 被害者および事故の態様 原告は、自分の運転する普通乗用自動車の後輪がパンクしたため、本件事故現場に右車輪を停車させ修理作業に従事していたところ、本件加害車が前記国道上を熊本市方面から川尻町方面に向け進行して来て右作業中の原告に接触したものである。

(五) 被害状況 原告は、本件事故により、左前頭骨裂骨折、左肩胛骨々折、左脛骨腓骨々折、頭蓋内出血の疑いの各傷害を受けた。

2  責任原因

(一) 被告会社

(1) 被告赤星は、本件事故当時被告会社熊本営業所に勤務していたものであり、本件加害車は右赤星の所有に属し同被告において右営業所への通勤に使用していたものである。しかし右赤星は、被告会社が請負う工事につきその工事現場への出向、右営業所への連絡等のために本件加害車を継続的に利用し、被告会社もこれを黙認していたものである。被告会社は、右車両の利用によつて、時間的(午前中早く現場へ到着し得る、遅くまで残業できる)にも営業的(現場間の移動、工事用具材料の運搬)にも利益を得ていた。一方、被告赤星は被告会社から車両の燃料代等の支給を受けていた。

(2) 被告赤星は、本件事故当夜も被告会社の残業のため帰宅が遅くなり、右残業を共にし帰宅するための車両を有しない同僚を前記営業所まで送つて行き、そこから自宅へ帰える途中においてその過失により本件事故を惹起したものである。

(3) 現場作業員の送迎は被告会社の業務であるところ、本件事故発生時間からして、他に交通機関がないのであるから、被告赤星の、本件加害車による現場→営業所→自宅への運転過程は、本来被告会社の行うべき業務であるにもかかわらず、右被告が右業務を被告会社に代つてなしたものである。

(4) 以上の各事実からして、被告会社は本件加害車の運行供用者として自賠法第三条により、更に、被告赤星の使用者として民法第七一五条により、原告の本件損害を賠償する責任がある。

(二) 被告赤星

右被告は、前方不注意の過失により本件事故を惹起した。

3  原告の本件損害

次に附加する外は別紙計算書のとおり。

弁護士費用 金七五万円

原告は、被告等において本件損害の賠償を任意に履行しないため、昭和四九年一二月二四日、弁護士である原告訴訟代理人に本件訴訟の追行を委任し、弁護士費用金七五万円を支払う旨約した。右弁護士費用も本件損害である。

4  損益相殺 金一四八万〇八一〇円

(一) 原告は、本件事故後被告赤星から金八八万〇八一〇円、自賠責保険金六〇万円、合計金一四八万〇八一〇円の支払いを受けたので、右受領金を弁護士費用金七五万円を除く本件損害合計額金六九四万三二八〇円から控除し、控除後の金五一五万一三九八円を本訴において被告等に請求する。

(二) なお、本件損益相殺後の本件損害総額と本請求損害総額との間に差額が存するが、右差額の存在は本件慰藉料算定の斟酌事由として主張するものである。

5  よつて、原告は、本訴により、被告等に対し、本件損害総額金五九〇万一三九八円およびこれに対する弁護士費用金七五万円を除く内金五一五万一三九八円につき本件事故の翌日である昭和四四年二月三〇日から、弁護士費用である内金七五万円につき本件事故の後である昭和五〇年一月三一日から、各支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の各支払いを求めるものである。

二  請求原因に対する被告等の答弁

1  答弁

(一) 被告会社

請求原因1(一)ないし(三)の各事実、同(四)の事実中原告が本件事故によりその身体に傷害を受けたこと、は認めるが、請求原因1のその余の事実はすべて不知。同2、(二)(1)の事実中被告赤星が本件事故当時被告会社熊本営業所に勤務していたこと、本件被告車が右赤星の所有に属するものであつて右赤星が右営業所への通勤に使用していたこと、は認めるが、その余の事実はすべて否認。同2(二)(2)の事実中、被告赤星が本件事故当夜同僚を被告会社熊本営業所附近まで送りそこから自宅へ帰える途中本件事故に遭遇したことは認めるがその余の事実は否認。同2(二)(3)および同(4)の主張は争う。被告会社は本件被告車の運行供用者ではないし、被告赤星が被告会社の業務執行中本件事故を惹起したものでもない。よつて、被告会社は何等本件事故につき責任を負うものではない。同3の主張事実はすべて争う。原告の熊本整形外科病院への入院は本件事故と相当因果関係がなく、したがつて右病院への入院期間を前提とする原告の本件治療費、休業損害、慰藉料についての主張はいずれも失当である。また原告は本件事故後昭和四五年一〇月以後一カ月金六万円以上の収入を得ていて、右収入は原告が本訴において主張する逸失利益の基礎である本件事故当時の月収より高額である。よつて原告には本件後遺障害による逸失利益の損害は発生していない。仮に原告の労働能力が本件後遺障害により低下しているとしても、右労働能力低下の継続期間は高々五年と認めるのが相当である。

(二) 被告赤星

請求原因1、2、(一)の各事実はいずれも認める。同3の事実は争う。同4(一)の事実中原告が本件事故後受領した金額は認めるが、その余の主張は争う。同5の主張は争う。

2  抗弁

(一) 過失相殺(ただし被告会社は仮定的に主張。)

(1) 本件事故当時は激しい降雨中であり、本件事故現場附近は暗かつた。

(2) 右の如き状況下において、原告がその乗用車両を修理するには、近くにガソリンスタンドの空地もあつたのであるから、右車両を右空地まで移動して修理作業にとりかかるか、少くとも右車両を道路側端に移動させ、かつ、他の通行車両の運転手に対し自車の駐車を認識させるため点燈する等適当な措置を採るべきであつた。

(3) しかるに、原告は、右措置のいずれも採らず、漫然道路中央部にしやがみ込んで自車の修理に従事していて本件事故に遭遇したものである。

(4) 右のとおり、本件事故の惹起には原告の過失も寄与しているのであるから、原告の右過失は本件損害額の算定にあたり斟酌されるべきである。

(二) 損益相殺(ただし、被告会社のみが仮定的に主張)

原告は、本件事故後、被告赤星より金六九万一八八二円、自賠責保険金として金一一〇万円、の各支払いを受けた外社会保険より金三七万三三九〇円の支払いを受けた。よつて、右合計金二一六万五二七二円は本件損害額と損益相殺されるべきである。

三  抗弁に対する原告の答弁

1  過失相殺について

抗弁事実(1)は認めるが、その余の事実はすべて否認。

2  損益相殺について

原告が本件事故後受領した金額については請求原因4(一)で主張したとおりである。したがつて、右主張の範囲内では受領金額を認めるがその余の部分は否認。

第三証拠関係〔略〕

理由

第一被告会社に対する請求について

一  請求原因1(一)ないし(三)の各事実、同(四)の事実中原告が本件事故によりその身体に傷害を受けたこと、同2(二)(1)の事実中被告赤星が本件事故当時被告会社熊本営業所に勤務していたこと、本件被告車が右赤星の所有に属するものであつて右赤星が右営業所への通勤に使用していたこと、同2(二)(2)の事実中被告赤星が本件事故当夜同僚を右営業所附近まで送りそこから自宅への帰途本件事故に遭遇したことはいずれも当事者間に争いがない。

二  そこで、被告会社の本件責任原因につき検討する。

1(一)  先ず自賠法第三条に基づく責任原因について見るに、被告会社をして本件被告車の運行供用者であることを肯認させるに足りる証拠がない。

(二)  かえつて、〔証拠略〕を総合すると次の各事実が認められる。

(1) 本件事故当時における被告会社熊本営業所における指揮命令系統は所長、主任、組長、組員という構成であつた。主任は内線外線関係各三名から成り、内線関係主任の下の組長および組員は内線関係の業務に従事していた。右内線関係の業務内容は、パイプを埋込み電線を通す配管入線器具取付けというビル工事を主として一般家庭の照明関係工事を副とするものである。したがつて、内線関係の業務は屋内作業をその主体とするものである。そして、内線関係組員(以下内線工という)が外線関係業務に従事せしめられることは皆無に近い。

(2) 内線工の業務は、その内容からして車両の使用を必然とするものでなく、ただ被告会社において前記営業所より工事現場に赴く方法を各内線工の選択に一任している関係上単車を有する内線工が右車両を使用する場合がある。そして、そのような場合被告会社は作業日報に記入された前記営業所から現場までの走行距離にしたがい事後承認の形で当該内線工に対しガソリン手当を支給している。しかして、右ガソリン手当は自宅から右営業所までの通退勤に使用された場合に支給される所謂通勤費と明らかに区別されている。

(3) 工事現場で使用される内線関係の工具(ただし内線工の帯有できるペンチ、ドライバー等を除く)や資材は、被告会社所有の車両で前記営業所から工事現場まで運搬され内線工所有の単車で運搬されることはない。

(4) 被告会社では、従業員所有の各車両に「DZ」マークを貼付させているが、これは日本能率協会提唱にかかる安全運転のシンボルマークに過ぎない。そのほか、右会社ではその従業員の車両購入に対し金銭的補助を与えたことはないし、個人所有車の修理、部品の付け替え等の費用を負担したことはない。これらの費用は一切被告会社従業員の個人負担である。

(5) 被告会社内線工は、午前定刻に一旦営業所に出勤しその後右営業所から工事現場へ赴くのが原則であるが、工事現場の作業の進捗度により例外的に自宅から右工事現場へ直行すべく上司より指示される場合がある。そして、右例外的場合にも、右内線工の通退勤方法は当該内線工の選択に一任されているものである。

(6) 被告赤星は、本件事故当時被告会社前記営業所の内線工であり、本件事故当日は、熊本市健軍町所在熊本税務大学工事現場の内線工事に従事し、しかも、右工事現場の直接上司訴外内田光明から自宅より右工事現場まで直行すべく指示されていたものである。右被告が右工事現場で従事した作業内容は、屋内の電気設備工事であつて本件被告車の使用を何等必要としなかつた。そして、右被告は何人からも右当日の作業終了後右工事現場から前記営業所へ立寄るべく指示を受けていなかつたものである。

(三)  右認定に反する被告赤星本人の供述部分は前掲各証拠と対比してにわかに信用することができない。

(四)  右認定各事実に照らすと、被告会社が本件被告車をその業務上継続的に利用していたとは認め難く、よつて被告会社が本件事故当時本件被告車の運行供用者であつたことを肯認し得ず、原告のこの点に関する主張は理由がないというほかはない。

2(一)  次ぎに民法第七一五条に基づく責任原因について見るに、右1、(5)、(6)で認定した各事実に照らすと、被告赤星が被告会社の事業の執行に付き本件事故を惹起したとは認め難く、原告の右法条に基づく被告会社の責任原因は、その余の事実につき判断を加えるまでもなく、右説示の点で既に理由がない。

三  結局、被告会社には本件事故に対する責任原因を認めるにいたらず、原告の右被告に対する本訴請求は、当事者双方のその余の主張について判断を加えるまでもなく、右説示の点で既に理由がないと結論される。

第二被告赤星に対する請求について

一1  請求原因1、2の各事実は、当事者間に争いがない。

2  そこで、原告の本件損害につき判断する。

(一) 治療費 金一五万五九〇二円

(1) 〔証拠略〕を総合すると次の各事実が認められその認定を覆えすに足りる証拠はない。

原告は本件受傷治療のため次の病院へ次のとおり入、通院し、次の治療費を要した。(ただし、自己負担分)

(イ) 熊本市所在杉村病院へ昭和四四年三月二九日から同年一二月一七日まで二六四日間入院、治療費金一三万五六四二円。

(ロ) 同市所在熊本整形外科病院へ同年一二月一七日から昭和四五年七月三一日まで二二八日間入院、一日通院、治療費金二〇二六〇円。

(ハ) 右病院へ昭和四六年三月二三日から同年四月一三日まで二二日間入院。

(ニ) 右治療費合計は金一五万五九〇二円である。

(二) 入院雑費 金一万三二四二円

(1) 〔証拠略〕を総合すると次の各事実が認められ、その認定を覆えすに足りる証拠はない。

原告は、前記入院期間中次の出費をした。

(イ) 患部冷却用氷代 金一五〇〇円

(ロ) 牛乳代 金九四二円

(ハ) ヤクルト代 金一万〇八〇〇円

(2) 右合計金一万三二四二円も本件事故と相当因果関係に立つ損害というべきである。

(三) 休業損害 金八八万七九八六円

(1) 〔証拠略〕を総合すると次の各事実が認められ、その認定を覆えすに足りる証拠はない。

(イ) 原告は、本件事故当時熊本市所在有限会社オーケイタクシーに勤務し、一日平均金一五三九円(原告主張の範囲)の収入を得ていたところ、本件受傷治療のため前記のとおり入院してその期間合計五一四日右会社を欠勤しその間右会社から給与を全く支給されなかつた。よつて、その金額の合計は金七九万一〇四六円となる。

(ロ) 原告は右治療入院のため右会社から次の賞与の支給を受け得なかつた。

(Ⅰ) 昭和四四年七月 金二万円

(Ⅱ) 同年一二月 金四万三九四〇円

(Ⅲ) 昭和四五年七月 金三万三〇〇〇円

合計 金九万六九四〇円

(2) 右(イ)、(ロ)の合計金八八万七九八六円が本件休業損害である。

(四) 本件後遺障害による逸失利益 金二九七万八三三七円

(1) 〔証拠略〕を総合すると次の各事実が認められ、その認定を覆えすに足りる証拠はない。

(イ) 原告には本件受傷の後遺障害として左足関節運動障害が存在し、右後遺障害はその等級第一〇級に該当するものである。

(ロ) 原告は、本件事故後の昭和四五年一〇月島原市所在有限会社ミクリヤタクシーに運転手として入社して昭和四六年二月まで右会社に勤務し、同年三月から同年一〇月までは前記熊本整形外科病院へ入院した関係もあつて右会社を休職したが、その後同年一一月から復職して昭和四七年一二月まで引続き右会社に勤務した。しかし、体調が悪く島原市所在村上整形外科に同年一一月二〇日から昭和四八年四月三日まで通院して治療を受け、同年五月一六日からは同市所在有限会社島原相互運輸に就職して本件後遺障害から来る体調不全から長時間の乗車勤務に耐えられず、医師の勧めもあつて、配車整備関係の業務に従事しているものである。しかして、右会社における昭和四九年五月における勤務状況は月別平均稼働日数において右会社従業員の平均日数に匹敵するもその給与は右従業員の平均給与の四七・七パーセントに過ぎない。

(ハ) 原告は、本件事故当時二五才の健康な男子であつた。

(2)(イ) 昭和四八年簡易生命表によれば原告の平均余命は四七・七七年と認められ、また所謂労働能力喪失率表に準拠すれば原告の本件後遺障害に基づく労働能力喪失率は二七パーセントである。

(ロ) 右各事実と前記(1)(ロ)の認定事実を総合勘案すると、原告の本件後遺障害による労働能力の喪失率は二七パーセント、右喪失期間は三五年と認めるのが相当である。

(3) しかして、原告が本件事故当時一カ月平均金四万六一七〇円の収入を得ていたことは前記認定のとおりである。しからば、その一年間の収入は金五五万四〇四〇円となり、その二七パーセントは金一四万九五九〇円となる。(円未満四捨五入。以下同じ)

(4) 以上の各事実を基礎として、年別複式ホフマン計算方法により年五分の中間利息を控除してその現価額を計算すると、その金額は金二九七万八三三七円となる。(ホフマン式係数一九・九一)

(五) 慰藉料 金一五〇万円

(1) 原告が、本件受傷治療のため合計五一四日入院したことは前記認定のとおりである。

(2) 原告に本件受傷による障害等級第一〇級に該当する後遺障害が残存することは前記認定のとおりである。

(3) 右認定事実に基づけば、原告の本件慰藉料は合計金一五〇万円と認めるのが相当である。

(六) 右認定したところからすると、原告の本件損害は合計金五五三万五四六七円となる。

二  被告赤星の過失相殺の抗弁につき判断する。

1  抗弁事実(1)は当時者間に争いがない。

2(一)  〔証拠略〕を総合すると次の各事実が認められる。

(1) 原告は、本件事故当時自車を道路左端に寄せ後輪パンクの修理に従事していた。

(2) しかし、原告は、その際、自車のライトを消したままの状態で、しかも他の通行車両に対し自車の駐車を告げる何等の標識も設けていなかつた。

(二)  右認定に反する原告本人尋問(第一回)の結果は前掲各証拠と対比してにわかに信用することができず、他に右認定を覆えすに足りる証拠はない。

3  右認定事実からすれば、原告には本件事故当時他の通行車両の運転者に対し自車の駐車を認識させるため自車に点燈する等適当な措置を採るべき注意義務があつたにもかかわらず、右義務を怠り何等右措置を採らないで漫然と自車の修理に従事していた過失により本件事故に遭遇したというほかはない。さすれば、原告の右過失は本件事故の発生に寄与しているというべく、本件損害額の算定に当り原告の右過失を斟酌するのが相当である。しかして、原告の右過失割合は全体に対し四〇パーセントと認めるのが相当である。

4  そこで、原告の本件損害合計額金五五三万五四六七円を原告の右過失割合で所謂過失相殺すると、原告が被告赤星に請求し得る本件損害額は金三三二万一二八〇円となる。

三  損害の填補

1  原告が本件事故後被告赤星より金八八万〇八一〇円、自賠責保険法六〇万円、合計金一四八万〇八一〇円の支払いを受けたことは当事者間に争いがない。

2  そこで、右受領金一四八万〇八一〇円を本件損害の填補として、原告の本件損害金三三二万一二八〇円から控除すると、その残額は金一八四万〇四七〇円となる。

四  弁護士費用 金一九万円

1  〔証拠略〕を総合すると、原告は被告赤星において本件損害の賠償を任意に履行しないため弁護士である原告訴訟代理人に本件訴訟の追行を委任し、その際相当額の弁護士費用を支払う旨約したことが認められるところ、本件訴訟追行の難易度、その経緯、前記請求認容額等に照らし、本件事故と相当因果関係に立つ弁護士費用は金一九万円と認めるのが相当である。

五  右認定を総合すると、被告赤星は、原告に対し本件損害合計金二〇三万〇四七〇円およびこれに対する弁護士費用金一九万円を除いた内金一八四万〇四七〇円につき本件事故の翌日であることが当事者間に争いのない昭和四四年三月三〇日から、弁護士費用である内金一九万円につき本件事故の日の後であることが弁論の全趣旨から明らかな昭和五〇年一月三一日から、各支払ずみまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金を支払う責任があるというべきである。

第三結論

以上の次第で、原告の本訴請求中被告会社に対する分はすべて理由がないからこれを棄却し、被告赤星に対する分は右認定の限度で理由があるからその範囲内でこれを認容し、訴訟費用の負担につき民訴法第八九条、第九二条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を、各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 鳥飼英助)

損害額計算書

(一) 治療関係 169,144円

(1) 杉村病院 135,642円

S44.3.29―同年12.17まで264日入院

但しS44.4.25以降 国保による本人負担部分

(2) 熊本整形外科病院 20,260円

S44.12.17―S45.8.31まで259日うち228日入院

45.9.10 1日通院

S46.3.23―同年4.13日 22日間再入院

但し国保による本人負担部分

(3) 入院雑費 13,242円

氷代 1,500円

牛乳代 942円

ヤクルト 10,850円

(二) 休業損害 4,074,136円

前年度給与所得

(508,068円 但しS43年度分43.2月1日より12月まで11ケ月、但し、内4月は事故のため1週間勤務)よつて、508,068÷311≒1,600円しかし461円1日を切捨、慰藉料として請求する。

(1) 1,539円×546(日)=840,294円

(2) 賞与減額分 96,940円

44.7 20,000円

44.12 43,940円

45.7 33,000円

(3) 逸失利益 3,136,902円

就労可能年数 38年 係数 20,970

労働能力喪失率27/100(後遺症10級)

1,539×30×12×27/100×20,970=3,136,902円

(三) 慰藉料 2,700,000円

入院並びに後遺症による精神的苦痛

以上合計 6,943,280円

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